文化出版の仕事で、ミセス全集5「味の上等」料理編の撮影のときであった。この本の食器は料理を作る料亭の器も使っていたが、スタッフが古美術商から借りてきたものが多かった。責任者、スタッフ数人、デザイナー、カメラマンと大勢の撮影で、今、考えると贅沢な取材であった。
撮影が終り、食器をかえしに行くのに同行した。
ある店で、返却手続きをされているとき、傍らに、直径十五センチほどの銀の平板線で編まれた手付きの籠である。デザイナーと同時に目をつけ、価格も思ったよりや安かった。
デザイナーに譲る立場であったが、デザイナーが「じゃんけんに勝った方が買おう』といってくれた。これ幸いと真剣にジャンケンをした。
こんな時冷静に考えれば分かることなのだが、夢中になるとパーを出すことが多くなる。それに引っかかってしまってようである。負けた者の言い訳に過ぎないが。1968年の話。
未だに覚えているということは、よほど残念であったことので、頭にインプットされているのであろう。
2000年2月記
|