料理の撮影を始めて、随分経ってからのこと、飛騨の高山へ撮影に出かけた。その当時高山は、素朴な町であった。日帰り出来なかったので、夕方町中を歩き回った。
今ほど店が無かった。少ない中に、何でも屋さんがあって、ウインドーに食器らしき物があった。四寸鉢である。染付けで、伊万里の物だろうとおもった。
何となく欲しくなって値段を聞くと五客で三千円だという。夕食と同じ価格だった。その当時大阪の一寸した料亭は八千円から一万円したが、飛騨の高山の料亭は三千円だった。
一寸張込んだ価格だが、きちっとした部屋に通され、美味しい料理が腹一杯食べられたのである。
帰りの汽車賃を勘定しながら、財布の中を見ていると、店の人が、二千四百円でよいと言ってくれたので、買ってしまった。
良し悪しは別にして、気に入っていたが、食器として使う機会は、殆ど無かった。三十年も経ってから、亡き家内が家で茶事をするとのことで、使ってみた。
中々感じのいい向付けであるように思えた。その時も自分では伊万里ものと思い込んでいたのだが、よくよく見ると中国ものである。
四十年も経って、やっと分かったのである。初めての買い物としてはついていたのであろう。

染付端反小鉢 直径126o 高さ50o
2000年1月記
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